釧路湿原塾過去学習会記録2008年(平成20年)第30回学習会

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1月29日(火)

PM6:30 

シーサイドホテル

第30回学習会

講師:杉森洋一氏(釧路支庁農務課 課長)
『釧路湿原と農業と環境について』

講師:杉森洋一氏(釧路支庁農務課 課長)
『釧路湿原と農業と環境について』
1月29日(火)18:30~ シーサイドホテル


1、はじめに

○環境保全はなぜ必要なのか(人が生きていくためには不可欠)
      ├地球温暖化の危機)
      ├資源浪費による危機)
      └生態系の危機───┌ジーンプール)
                     ├不可逆性)
                     └人のエゴ

○日本農業はなぜ必要なのか(日本農業は日本人のみならず環境対策に通じる)
      ├食料の安定供給は福祉向上の第一歩
      ├食料自給率の危機と環境保全
      └釧路での農業は酪農・畜産しか成立しない




2、釧路の農業と湿原の環境

○釧路の農業が湿原環境を壊す主因は
      ├農地開発に伴う土砂流入
      └生産活動に伴う富栄養化

○昨今の酪農・畜産をめぐる情勢は
      ├生産環境の劣化と担い手問題
      └環境容量と家畜の排泄物対策

○酪農畜産に関する環境関連法令等
      ├水質汚濁防止法(昭和45年)
      ├廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年)
      ├悪臭防止法(昭和46年)
      ├環境基本法(平成5年)
      ├家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律(平成11年)
      └GAPなど

○農耕地の窒素環境容量と窒素収支
  農耕地の窒素環境容量とは、
  作物の窒素吸収量と土壌の最大保持量の合計で
  地下浸透水(地下水)の硝酸性窒素濃度が10mg/L以下

 1)農地利用形態別では、
  草地(225kgN/ha)>畑酪(200)>畑作(170)>水田(159)

 2)地下水の硝酸性窒素濃度は、
  畑作(6.3mg/L)>畑酪(3.7)>水田(2.7)>草地(2.0)

 3)超過窒素量(投入窒素量ー窒素環境容量)は、
  畑酪(24kg/ha)>畑作(20)>水田(-8)>草地(-12)
  ただし、釧路では弟子屈・厚岸・浜中を除き超過状態

3、家畜排せつ物についての道の取組

1)試験研究機関での取組

  ・家畜糞尿プロジェクト研究チームにおける研究
   (6農試・畜試17研究科)
   第1期 「家畜糞尿利用技術開発事業」(平成6~10年度)
   第2期 「家畜ふん尿循環利用システム開発事業」
      (平成11年~15年度)

  ・農業環境保全のための様々な研究(主なもの)
   1:地下水の硝酸銀汚染を防止するための窒素管理方策
     -北海道農耕地の窒素環境容量Ver.2-
   2:農地の肥培管理情報に基づく
     地下水の硝酸銀危険度判定プログラムソフト
     「NiPRAS」の開発
   3:肥料養分循環に基づく草地管理のための
     意志決定支援ツール「AMaFe」の開発

2)家畜排せつ物処理施設整備への支援

  ・公共・非公共事業を活用した施設整備への支援
  ・各種施設・農業機械等の整備に要する経費への低利融資
  ・普及センター等における施設整備や施設利用に
   あたってのサポート活動

3)家畜排せつ物管理適正化指導チームによる、
  全酪農・畜産農家への直接指導

  ・支庁・市町村・農業協同組合などの
   職員で指導チームを編成し
   全酪農・畜産農家へ巡回により
   家畜排せつ物の管理状況を確認・指導の実施

4、釧路湿原の環境保全に資する支庁の農業行政

  釧路水産用水質汚濁防止法対策協議会との
  協働の取り組み活動

   ・汚濁防止対策協議会と農業団体との
    情報(意見)交換会の開催
   ・汚濁防止対策協議会と開建・土現・支庁等との
    河川工事公共事業についての
    情報交換会の開催や工事パトロールの実施



以上盛りだくさんなお話に、昆虫愛好家としての「虫と環境」の楽しいお話も
交え、とてもわかりやすく湿原と農業と環境について
学ばせていただきました。

※用語について※
ジーンプール【Gene pool】遺伝子給源
GAP【Good Agricultural Practice 】 適正農業規範

ちなみに、上記2つの用語について
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